校長の研究室 
 > 作曲理論研究1「フーガの書法」

フーガに関する用語

フーガとは声部様式の音楽で、主題が順次各声部に現れる楽曲である。
以下に良く用いられる用語について記す。

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主題

  • フーガにおける主題とは、冒頭より1声部で始まるひと区切りのフレーズのことを指す。

  • 主題とは、次に記す「主唱」と「答唱」の両方を指す。

主唱(Sujet)

  • 主唱(しゅしょう)は、フーガの主題のことである。

答唱(Réponse)

  • 答唱(とうしょう)は、主唱を完全5度上に移高したもの、すなわち属調に移調された主唱である。

  • 答唱には真答唱と変答唱がある。

  • 真答唱は主唱が完全5度上に移高(移調)されているものをいう。

  • 変答唱は主唱の冒頭の属音を主音に変更するなどして、主唱が正確に完全5度上となっていないものをいう。

  • 変答唱において、冒頭の属音を主音に変化させるなどの手法を「変応(へんのう)」という。

  • 補足

    本稿は『学習追走曲』での表記を基本とするが、『フーガ書法』では特に変答唱の考え方が異なるので記す。

    • 答唱には正答唱、変答唱、調的答唱がある。

    • 正答唱は主唱が完全5度上に移調されているものをいい、このように属調で応答することを「正応(せいのう)」という。(『学習追走曲』の真答唱と同じ)

    • 変答唱は主唱が完全4度上に移調されているものをいい、このように下属調で応答することを「変応(へんのう)」という。

    • 調的答唱は主唱の主調部分を5度上、属調部分を4度上に移調して応答するものをいう。(『学習追走曲』の変答唱と同じ)

    以上、「変応」「変答唱」に関する概念に違いがある。

対唱(Contre Sujet)

  • 対唱(たいしょう)は、主題(主唱、答唱)の対旋律である。

  • 主題に次いで出現率が高い重要な素材であり、副主題とも言う。

その他の用語

  • 以下のモティーフについて、用語の解説を行う。

    note01
  • 『拡大』

    音価を2倍にするなど、音価を長く変更することをいう。

    note02
  • 『縮小』

    音価を半分にするなど、音価を短く変更することをいう。

    note03
  • 『転回』(反行)

    5度上行を5度下行のように、音程関係を反転させることをいう。
    音程の長短は関係なく音階に従う場合と、長短を完全に再現する場合がある。下記譜例では、()内の#を付ければ長短が正確となる。

    note04
  • 『逆行』

    後ろから書き直したものである。

    note05

※ 主唱、答唱などの例は『ショパンの主題による追走曲』、または後に記載する分析譜例を参照されたい。

※ 変応の方法や対唱の作成方法について、ここでは解説しないので、冒頭ページに掲げた文献を参照されたい。

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