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バロック前期 Page.1

初期バロックの器楽曲

17世紀にはさまざまな器楽曲の楽種が生まれました。たとえば、後期ルネサンスの声楽曲に由来する「リチェルカーレ」、「鳴り響く」という言葉に由来する「ソナタ」や、ラテン語の「論争する」やイタリア語の「調和する」「集う」という言葉に由来すると考えられている「コンチェルト」、よく知られた旋律を基にした一緒に変奏曲である「ディミニューション」などです。

ロニョーニによるパレストリーナの《春は丘を彩り》のディミニューション

▼《春は丘を彩り》の主題とロニョーニによるディミニューション

ディミニューションdiminutionはもともと「縮小」を意味し、主題の旋律の音型を細かく分割して演奏する旋律変奏法の一つです。当時のヴァイオリンやリコーダーなどの器楽奏者は当時の流行歌などの旋律を自由に即興的に展開させました。英語でディヴィジョン、スペイン語ではディフェレンシアといいます。

フランチェスコ・ロニョーニは16世紀末から17世紀にかけてミラノで活躍した器楽奏者。この曲は後期ルネサンスにローマで活躍した巨匠パレストリーナ(1525年か26年~1594年)の5声のマドリガーレの旋律によるディミニューション。チェンバロの声部は通奏低音ではなく、珍しく両手の声部とも記譜されています。

因みに、初期バロックの作曲家には、ドイツの三大Sと言われるシュッツ(1585年~1672 年)、シャイト(1587年~1653年)、シャイン(1586年~1630年)。シャイトらの師として、ドイツのオルガン音楽の発展に寄与したオランダのスウェーリング(1562年~1621年)らがいます。彼らはオルガン音楽やカンタータ、室内楽など、バッハへ繋がるドイツ音楽の基礎を作りました。