総合音楽講座 > 第1回 弦楽器について > P5

一人でもひとりじゃない

ヴァイオリンで上の譜例の音を弾く場合、D線でもG線でもできることはおわかりですね。弦楽器は一つの音を何通りかの方法で弾くことができます。

音の高さは同じでも、音色と音の勢いが変わります。

弦の太さ、材質の違いから、4本の弦の音にはそれぞれに個性があるからです。

人の声で想像してみてください。二人の女性、太くて豊かな響きの低い声の人と、軽やかで細く高い声の人。

この二人が同じ歌を(キーは変えずに)うたった場合、印象は違いますね。

どの弦を用いるのかは、演奏家が指使いとメロディの雰囲気などを考えて決めます。

作曲家に “ここはこの弦で弾いてほしい” というこだわりがある場合は、楽譜に「 sul G 」(G線をつかって)などの書きこみがしてあります。

一人二役

複数の弦を同時に弾き、和音にすることを重音奏法といいます。

となりどうしの2本の弦で、指が届く範囲の音を選ぶという制約はありますが、2音の重音ならば、長くのばすこともできます。

3つ、4つの音の和音は、すべての音を長くのばすことはできないので、どこかの音を短くして弾きます。

この重音奏法を使って、何人かの人が会話をするような音楽(ポリフォニー)を一人で演奏することができます。

2本の弦を同時に、あるいは交互に響かせながら、言葉をかわしあうように2声のフレーズを歌っていきます。

各弦の音の個性も手伝って、二役、三役もかかえるポリフォニーの曲を一人でみごとに表現していきます。