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もう一つの「歓喜の歌」

さぁ、千秋真一の言う「歓喜の歌」、ブラームスです。

この旋律が出てくるのはハ短調で開始されたこの交響曲が、ハ長調に転じた最後の第4楽章です。

一方、ベートーヴェンでは、ニ短調で開始され、それがニ長調に転じたやはり第4楽章に出てきます。何かよく似ていますね。

では、 [譜例2] をみてみましょう。

[譜例2]

ブラームス/交響曲第1番 ハ短調 作品68 第4楽章 (主旋律)

いかがですか?アウフタクト(弱起)で始まりますが、1小節のリズムは同じですね。ここでも先ほどの要領で全体の分析をしてみましょう。

1~4小節、5~8小節の作り方はどうなっていますか。ベートーヴェンと同じく、 a + a' ですね。

9~12小節はどうでしょう? ここも同様に b になります。

では13~16小節はどうでしょう。a' に戻っていますか?

いいえ。ここは初めて出てくるフレーズであり、 c となります。

つまり全体は a + a' + b + c となり、最後の部分がベートーヴェンの旋律の構造とは異なっていることがわかります。この違いはどこから来るのでしょうか。