総合音楽講座 > 第8回 ピタゴラスと平均律とトランペット > P9

今日(こんにち)の演奏現場では・・・

この文章では、様々な理論的音階とその違いについて述べてきましたが、
そのように違ったものを、私たち演奏家はどのように聴き分けて演奏しているのだろう?

という事を最後に書きたいと思います。

金管楽器は、管の空気柱の共鳴振動で音が鳴っているわけですが、振動の元になっているのは、私たちの唇です。

ですので、ピーンと張った状態だと音は高くなり、緩んでいると音は低くなります。

同じ楽器と同じマウスピースでも、吹き手が違うと音の高さが少しずつ違うのは、こういう理由に依ります。

この唇の状態を、程よく振動させるために、ウォームアップをします。

息の強さによっても、音の高さは変わります。充分の息の支えがないと、音はぶら下がってしまいます。

それから、音の高さは、口腔の広さにも影響されます。口腔が狭いと音は少し高くなり、広いと低くなります。

口腔の広さを変化させる役目を果たすのは、主に舌です。

舌の中間部分をぐっとへこませる事によって、強制振動やペダルトーンの練習では、正規の運指で出る音から長3度~完全4度下げる事ができます。

金管楽器には同じ運指でも出せる音の高さに幅があることがわかりました。

メーカーによっては、迂回管の長さが、必ずしも、平均律の半音・全音・全音半になっていないことも前述しました。

では、その音の高さの幅の中から、どの音が今演奏している音楽にふさわしいかを選ぶのでしょうか?

それには、まず、周りの音を聴き、自分の役割を理解し、そして更には、その音楽が生まれた年代・場所などの時代背景を知る事が必要になります。

さまざまな経験と、音楽史の学習を積んで、音楽的で知的な演奏が増えることを期待しています。

参考文献:大蔵康義/音と音楽の基礎知識(国書刊行会)